ベガーズオペラ見ました

 見たその日に書いた長文日記を操作ミス(?)で消してしまって日記書く気になりませんでした(笑)
 つーわけで、頑張って書き直した1週間以上前の日記です。
 
 

ベガーズ・オペラ」とは、1727年に英国の劇作家ジョン・ゲイが「庶民のためのオペラ」を目指して書き下ろした。当時の舞台はイタリアのオペラやギリシャ神話などが中心だったが、ゲイは色男の盗賊と、腹黒い商人の娘、看守の娘の三角関係を活写し、出演者に流行歌や民謡を歌わせた。1920年ブレヒトが改作して「三文オペラ」として発表。ミュージカルの源流となった。

 
 という古い作品なのですが、古さをまったく感じさせない面白いお芝居でした。
 小悪人とか賄賂とか恋愛とか三角関係とか、いつの時代でも使える普遍のモチーフなんですね。ほっとするような、呆れるような(笑)。
 
 
 ベガーズ(乞食達)が1日だけ劇場を借りて上演する芝居、という設定で、開演前から舞台に出ていたプロの老役者が、時間になっても現れないベガーズに対する愚痴を観客に語るところから始まります。
 んで、愚痴っている間にベガーズが登場するのですが、客席の後ろから、がやがやと、手を振ったり、客と握手しちゃったりしながら登場。ちょっとビックリしました。でも老役者のおかげでちょっとずつ舞台モードだった頭がこれで完全に舞台モードになりました。こういうフェイドインっていいですね。
 んで、狂言回し役、この芝居を書いた詩人がこの芝居についてちょっと語った後、芝居が始まります。
 内容は、
 
 女好きの小悪党*1が、女が原因で捕まったり逃げたりしながら最後には処刑される話
 
 一言で言うとこんな感じ。
 この主人公が本当にしょーもないんだ(笑)。
 
 主人公に娘を食われた両親が、主人公の他の女達*2に密告されるよりも早くチクって密告料*3をもらおうと画策、それを察知した娘が主人公を何とか逃がすんだけど*4、潜伏中の主人公はそこにおねーちゃん達をいっぱい呼んで大騒ぎ。結局そのおねーちゃん達に裏切られて捕まっちゃって、監獄では昔手を付けて今妊娠中の監守長の娘をなんとかたぶらかし*5、逃がしてもらうんだけど、逃亡中に馴染みのおねーちゃんに誘われるまま部屋に付いて行き、そこをそのおねーちゃんの雇い主*6に密告されて、捕まって、結局処刑。
 
 ほら、しょーもない(笑)。
 
 でも、しょーもないの主人公だけじゃないんですよ、これが。
 主人公を密告しようとした両親は、小悪党達がかっぱらって来た品物を買い取ってるんだけど、その小悪党が役に立たないと見ると、チクって密告料を稼いでるし、
 監守長は、囚人からの賄賂の額で手錠のランクを決めちゃうし*7、↑の親父とつるんでるし、
 この舞台、出てくる奴こんなんばっかw。
 でも、聖人君主が出てくる芝居よりは、リアリティっつーか、妙な共感はありましたね。「・・・・・・はいはい(目を逸らしつつ頷く)」ではなく、「あー・・・・・・はいはい(苦笑しながら頷く)」って感じでしょうかね?w
 
 そんな中で心を打たれたのが2シーン。
 
 1つ目は、監守長の娘が主人公を逃がすシーン。脱獄していく彼を見ながらこう言うんです。
 
 あんたはあたしを愛してない。でも、感謝はして
 
 これは、結構きました。
 うわ、この切なさ、すっごい分かるよ      
 と、ちょっと涙出そうになりました。
 が、次のシーンで彼女は「脱獄した男が新しい女の元へ行く可能性」を思い出し、その新しい女を毒殺しようとするんですけどね。私の涙を返せ(笑)*8
 
 もう一つは主人公が処刑された後のシーン。
 
 舞台上段に作られた通路の穴から人形を落として、あら、本当に処刑されちゃうんだ。とちょっと意外に思っていた時に、今まで舞台を見ていた老役者が叫ぶんです。
 
 これではあまりに救いがないじゃないか
 日々の生活がどん底だからこそ、我々は舞台の上で未来への光を示すべきではないのか
*9
 
 これ、結構私が普段舞台等を見る時に思っている事に近いので、素直に共感しました。どうせ見るなら楽しくなるモノの方がいいよねぇ、と*10
 
 で、それに対して詩人が答えます。
 
 分かりましたよ。(エキストラ役の役者に向かって)おい、お前ら。その辺走り回って「恩赦だ!」って叫べ
 
 それでいいのか?(笑)。
 いや、笑い事じゃないんですけど。舞台上では悲しみムードが一変、歓喜に満ち溢れ、舞台の下で詩人が悲痛な声で叫ぶんです。
 
 これで俺が言いたい事は永遠に伝わらなくなった
 罪を犯すのは、貧乏人も金持ちも一緒だ
 だが、処刑されるのは貧乏人だけなんだってことが!

 
 なるほど。悪党しか出てこない芝居の意図はそれだったのか。
 と、自分のアサハカさを痛感している私の前で、舞台の上では歓喜の踊りが繰り広げられ、劇団員に誘われてしぶしぶ舞台に上がった詩人も踊り出し、なんてーのかな・・・これ・・・えーっと・・・
 
 ぐでぐで?(笑)
 
 まぁ、そのまま舞台は幕を閉じたわけですが。
 でも、ぐでぐでだなぁ、と思いつつも、いくつか心に残るポイントがあったので、私にとって良い芝居だったと思います。うん。ほんとにあの台詞は良かった。
 
 あ、演出が色々と面白かったです。
 
 舞台の袖にサイドステージシートと呼ばれる客席があって、色々とそこの客がいじられてるのがまず面白かったですねー
 開演前、舞台上に現れた老役者に舞台掃除させられてたり、
 教授*11の膝の上に乗せられて愛を囁かれたり、バラの花もらってたり(うらやましーぞー!)、
 そんな芝居は見たことがなかったので、非常に面白かったです。
 
 幕間も、いつの間にか現れていた(トイレから帰ってきたらもう出てたので)役者達が、客席のお客さん達にプレゼントもらってました。さすがベガーズオペラw。
 開演前に、気合の入った服着たお嬢さんが気合入れてお手紙書いてたから、何だろう? とは思っていたのですが、好きな役者さんに直接渡せるなら、そりゃ気合入りますよねー。納得しました。しかし、皆よくこんな時間があるって調べてるなぁ(感心)。舞台に座ったもりくみさんの、いただいたプレゼント食べてる姿が可愛らしかったですw。
 
 私にとって芝居で一番大切なのは脚本なんですけど*12、演出もやっぱり大事だなぁ、と思わせてくれる舞台でした。蜷川さんの芝居を見たときにも思ったんだけど、偉大な演出家って、やっぱりすごいわ。うん。

*1:強盗などで生計をたてていらっしゃる

*2:超いっぱいいる

*3:車夫なら1年暮らせるらしい位の額

*4:そこで超甘ったるいやりとりアリ

*5:いや、きっと奴は本気なんだろう・・・

*6:まぁ、女郎屋の女主人ってやつだ

*7:それでも手錠かけるんだけどねw

*8:出てないけどw

*9:さすがに一言一句覚えているわけではないのでニュアンスで読んでくだせいw

*10:もちろんそればっかじゃダメだとも思うけど

*11:主人公役の内野聖陽さんの事をこう呼んでます。フジドラマ「不機嫌なジーン」より

*12:その割りに役者で舞台選びますがw